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作・絵Bodil Hagbrink(ボディル・ハグブリンク)

Den långa rajden

サーミの人々の旅路

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 ヨーハン・アスラック、ベーリット・マーリット、そしてミッケル・アンダシュは遊牧を生業とするサーミ民族の子どもたちです。彼らはノルウェーのずっと北のほうにある村、カウトケイノに住んでいます。イースターと大きなトナカイレース大会が終わると、彼らはトナカイの群れを連れて海岸へ、そして北極海の美しい島へ放牧をしにでかけていきます。

 冬の間、サーミの人々はトナカイを放牧するとき、もっぱらスノーモービルを使っています。しかしこの放牧への旅では、食べ物や服などの生活に必要なものを運ぶため、トナカイにソリをつないで引かせます。

このようなサーミ民族の冬の村での暮らしと、夏の放牧地へ着くまでの旅を、丁寧な取材に基づいて生き生きと描いた絵本です。

 サーミ民族とは、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北欧三国とロシアにまたがって居住する先住民族です。彼らは古くから手工業や狩猟・漁業、トナカイ飼育や放牧を生業として生活してきました。この絵本に描かれているのは、サーミ民族の中でもトナカイの放牧を主な生業とする「トナカイ(丘陵)サーミ」の人々です。現在、トナカイ飼育に従事しているサーミは全体の約10%程度。その彼らも遊牧だけで暮らしているわけではなく、観光業や漁業などと組み合わせて生計を立てています。

 タイトルにある“rajd”とは、トナカイ遊牧を行うサーミの人々がものを運ぶために用いた、ソリとトナカイを互いにつないだ行列のことです。同じ意味を持つサーミ語の“raido”に由来しています。なのでタイトルを直訳すると「長いトナカイの行列」といったところになるでしょうか。なお、サーミ民族の母語であるサーミ語は、フィンランド語と同じフィン・ウゴル諸語に属しています。これはスウェーデン語やノルウェー語とは全く異なる言語です。

 作者のボディル・ハグブリンクは1976年の春、実際にこの“rajd”を伴う旅に参加し、その後サーミ民族の一家と一緒に数ヶ月生活しています。そのため、この絵本では彼らの食生活や衣装などがかなり細かく、リアリティを持って描かれています。ハグブリンクはこの絵本の他にもサーミ民族についての絵本を制作しているようで、そのうちの一冊“Hux flux”(1986)は「ゆきとトナカイのうた」という邦題で1990年に日本語訳が出ています。これが2001年に復刊されたものが、中古品にはなりますがまだ入手可能なようです。

​(スウェーデン語専攻4年 有園)

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 ("rajden")

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