作・絵:Per Gustavsson(ペール・グスタブション)

Skuggsidan

影の世界

 今日紹介するのは、ちょっと「怖い」絵本です。

 ラグナル少年は、まだ夜になるまでずいぶん時間があるのを嬉しいと思っています。彼は外に出て、笑っている昼間の太陽に鉛筆をかざしてみました。振り返ると、そこには影が見えています。影は笑っていません。なぜなら、影には口がないからです。

 ラグナルは手で鳥の影絵を作ってみます。しかし、そこに猫の形をした影がやってきました。それは鳥を襲おうとしているようでした。ラグナルが腕をはためかせると、鳥は羽ばたいて飛んでいきました。鳥の影を追いかけて、ラグナルは影の森へ入り込んで行きます…

 この絵本の不思議なところは、話の内容自体が特別怖いわけではないのに、どこか後を引く不気味さを感じさせるところです。最初のページは、文章だけ読むとなんてことはないシーンなのですが、絵には大きな影の化物が写り込んでいます。どのページの絵にもこうしたおかしな箇所があるのですが、文章では触れられません。表紙を見ればわかるとおり、絵柄自体も不穏な空気を醸し出しています。文章からは特に感じられないイメージを絵が表現していること、そして文章で影について触れないことでむしろ絵の不気味さが増すということ──これらは絵と文章の組み合わせである絵本ならではの表現と言えます。

 影や夜、というものは非常に身近な存在でありながら、恐怖を喚起してやまないものです。一方で夜の暗い森や、路地裏の奥の暗がりには、人が覗き込まずにはいられないなにかがあります。そんな「怖いものみたさ」を絶妙にくすぐってくる絵本です。

​(スウェーデン語専攻4年 有園)

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