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作:Selma Lagerlöf(セルマ・ラーゲルレーヴ)

絵:Ilon Wikland(イロン・ヴィークランド)

Den heliga natten

聖なる夜

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 「わたし」のおばあちゃんは、たくさんのお話をしてくれる、とてもすてきなおばあちゃんでした。「わたし」が5歳のころにおばあちゃんは亡くなって、今ではもうどのお話もうろ覚えになってしまいましたが、ひとつ、はっきりと覚えているお話があります―ふたりきりのクリスマスの日に聞いた、キリスト誕生のお話です。「むかし、ひとりの男の人がいました。男の人はある暗い夜、火をもらいに外へ出ていきました。…」

 ラーゲルレーヴの穏やかな語りに、ヴィークランドが優しい絵を付けています。しんと静まり返ったクリスマスの夜を思わせるような、それでいて心がほっとあたたまるすてきな絵本です。

 この絵本で象徴的に描かれているのは「見る」ことです。

 お話をするときのおばあちゃんの口癖は「これは、わたしにおまえが見え、おまえにわたしが見えるのと同じように、本当のことなのだよ」でした。「見える」ということが”真実”や”信じられるもの”といった概念に強く結びつけられています。一方で、おばあちゃんのお話の中に、意地悪な羊飼いが「人を思いやる優しい気もち」を得、その瞬間キリストの誕生を祝う天使たちが見えるようになる、という場面が登場します。それ以前の意地悪な羊飼いには見えていなかったものの、天使たちは確かにそこに存在していたのです。

 これらからわかることは、『人は必ずしも常に「見る」ことができているわけではなく、「本当」を見るためには「人を思いやる優しい気もち」の持ち主でなくてはならない』いうことです。常に「見る」ことができる優しい人間になりなさい、とおばあちゃんは伝えたかったのではないでしょうか。

 

セルマ・ラーゲルレーヴ(1858-1940)

 日本では『ニルスのふしぎな旅』でよく知られている作家ですが、児童向けの作品だけでなく純文学の世界でも非常に活躍しており、代表作には『エルサレム』『キリスト教伝説集』が挙げられます。1909年には女性として初めてノーベル文学賞を受賞しました。

 

イロン・ヴィークランド(1930-)

 アストリッド・リンドグレンのほぼ全作品のイラストを担当しているイラストレーター。1969年にエルサ・ベスコフ賞を受賞しています。

 (スウェーデン語専攻4年 片井)

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