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ブラナ:H. C. Branner (1903 - 1966 )

オススメの作品は?

短編集To minutters stilhed (『二分間の静寂』:1944)に収録された短編 “Skibet”(「船」)と“Ingeborg”(「インゲボー」)です。

「船」は父と子の親子の物語です。主人公ヨハネス が今は亡き父親との深い友情を回想する形で物語は語られます。ここに登場する父親は妻をはじめ家族皆から疎んじられています。生活力がなくいつも見果てぬ夢を追って現実の世界から逃避しているからです。自室に引きこもって小さな船の模型を末っ子ヨハネスと一緒に作ることで、かろうじて自らの精神的な居場所を確保していました。しかし最後にはこのヨハネスも成長すると共に、父親が大切にしていた船の模型を壊し、最後には不甲斐ない父親を裏切る行為をとってしまいます。その後、父親は…

もう一つの作品「インゲボー」はクリスマスが物語の背景となっています。インゲボーは主人公の女の子ルツが大切にしている陶器の人形です。この人形とルツはずっと一心同体でした。ところがクリスマスの日にルツとインゲボーの絆が断ち切られてしまう事件が起こります。あとは読んでのお楽しみ。

ブラナの作品に触れることになったきっかけは?

ブラナの作品は学生時代に『北欧文学作品集』(東海大学出版会1976年)に収録されている短編「青いセキセイインコ」(”De blå Undulater”)を読んだのがきっかけでした。心理描写に卓越した作家だと思いましたが、この作家に関しては日本語で読むよりも、デンマーク語で読むほうがはるかに心に染み入ってきました。文学事典などではイギリスのジョイスやウルフなどの「意識の流れ」を汲む最初期のモダニズム作家の影響を受けていると書かれていますが、とても平易なデンマーク語で書かれていて、読む人の心を引きつけます。

H. C. Branner についての簡単な紹介

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