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ヘレ:Helle Helle (1965 - )

オススメの作品は?

短編小説集Biler og dyr(『車と動物』2000)。この短編集がオススメというのは、何と言っても読みやすいから。と同時に登場人物がどこにでもいそうなデンマーク人で、そうした現代のデンマーク人の日常の一コマをさらっと、でも見事なほど端的に描写しているからと言ったら良いでしょうか。デンマークという国を理想的でもなく、だからと言って悲観的に深刻に描くわけでもない。いわゆるテーマとかドラマとかいうものがないのです。そんな彼女の文体に次第に好感を持てるようになったのはつい最近のことです。この短編集は100ページにも満たない小品です。その中に16編が収められています。一番長い作品でもわずか12ページ。私が好きなのは、“En lille tur”(「散歩」)。主人公の私は、老いた愛犬を安楽死させる決心をした主人公の母親と、安楽死させる直前の犬を連れて夏の昼下がりの町を散歩します。愛するペットとの最期の別れを苦渋に満ちた思いで迎える母親と、その母親を冷静に見守る娘。何気ない会話なのですが、その二人の会話の中には犬に対する愛情というよりも、どちらかというと「いま」を生きる二人の人生観の違いがさりげなく描かれているところが素敵です。

Helle Helle の作品に触れることになったきっかけは?

実はこの作家を知るきっかけとなったのは、彼女がデンマークで注目され始めたとき、現代のHerman Bang(Julekalenderの3日目で紹介しています)だと宣伝されたからだったのです。バングのファンだった私は興味津々でさっそく彼女の短編小説に飛びついたのですが、最初は期待を大きく裏切られたように感じました。確かにバングも人物やその周囲の情景を淡々と描き、極力複雑な説明や心理描写を避けるのですが、バングは短い会話やさりげない人物描写の中にわざと余韻を残します。「行間のニュアンスを読み取って!」という作者の声が聞こえます。またバング自身フランスの印象主義やロシアの劇作家チェーホフなどの影響を受けた作家なので、馴染みやすかったからかもしれません。ヘレはいい意味で、本当にデンマークらしい作家。現代のデンマーク人であれば、そしてデンマークに暮らしたことがあれば、この作家にきっと共感できると思います。

Minimalism(ミニマリズム)

1990年代以降にデンマーク文学の新しい潮流となってきた Minimalism(ミニマリズム)とHelle Helleの関係、そしてHerman BangとHelle Helleの共通点と違いについて説明しています。

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