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Vilhelm Hammershøi

​ヴィルヘルム・ハマスホイ

 本日はその静謐さあふれる室内画で人気の高いデンマークの画家、ヴィルヘルム・ハマスホイ(1864-1916)についてご紹介します。デンマークの著名な画家を挙げるときに、この人に触れないことはないのではないでしょうか。

 またハマスホイは近年日本でも人気が高まっています。日本でハマスホイの展覧会が初めて開かれたのは2008年のことなのですが、大きな注目を集め、以来飛躍的に人気を伸ばし続けています。つい昨年の2020年にも、東京都美術館と山口県立美術館で大型の展覧会が開催されたところです。ただ、東京展については、新型コロナウイルスの感染拡大の時期と重なったため、予定より短く閉幕してしまい残念でしたが、短い会期の中でも多くの人に深い印象を残したことと思います。

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ハマスホイの自画像​(1890)

 

ハマスホイは1864年にコペンハーゲンに生まれ、Frederiksbergで育ちました。幼い頃から絵画学校に通い、1879年にはコペンハーゲンの美術アカデミーの一員となります。また同時期にP.S.Krøyerにも従事し、ほどなくその才能と独自のスタイルを認められています。

 

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​Kvinde figure set fra ryggen(1888 )

en gammal kone siddende (1886)

デンマークのコペンハーゲン国立美術館 Statens Museum for Kunst(SMK)のHPにある、ハマスホイの紹介動画の中で、初期のハマスホイのスタイルの特徴について以下のような解説がありました。

「彼の作品の特徴として次のことが挙げられる。モチーフとなっている人物が何をしているのか、どのような動作をしているところなのかがよくわからないこと、一様に抑えた、くすんだ色調が見られること、同時代のほかの作品と比べるとより空白さがあり、物語性が見られないことである。」

上記の批評は彼の絵を何点か見るだけでもうなずけるのではないでしょうか。

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portræt af en ung pige(1885)

​ 1885年に制作されたこの絵は妹のAnnaをモデルに描いたものです。アカデミーからの受賞を狙って製作され、残念ながら受賞には至らなかったのですが、注目を集めるきっかけとなりました。

色味は黒とグレーが中心とおとなしいですが、額にかけての光の表現やモデルの表情がハマスホイにしか出せない魅力や作品のオーラを出しており、言いようもなくひきつけられてしまう作品のように筆者は感じています。

 

さて、1891年にハマスホイはIda Ilstedと結婚します。Idaは後の作品で中心的なモチーフ、モデルとなり、ハマスホイの作品と人生のいずれにおいても、欠かすことのできない人物となりました。

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Interør med kunstneren og hans hustru(1911)

(晩年に描かれた夫婦のダブルポートレート)

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portræt af Ida, kunstnerens hustru(1898)

(イーダのスケッチ)

さて、夫婦はヨーロッパ各地を旅するのですが、最も結びつきが強かったのは故郷のコペンハーゲンでした。コペンハーゲンの街と、彼らが暮らした住居をモチーフに、家具や室内などを描いた多くの絵が生み出されています。

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Amalienborg square(1896)

​(アマリエンボー城の広場)

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stue i Strandgade med solskin på gulvet(1901)

​(ストランゲーゼ通りの家の、光が差し込む居間の様子)

光が差し込んでいるリビングであったり、後ろ姿の人物であったり…。私たちが普通に暮らす中でふと素敵だな、特別なことはないけど満たされていて芸術的だなと思う景色を、ハマスホイが切り取って、独特の空気で包んで見せてくれているような、そんな風に筆者は感じています。また、どこかなつかしいような気持ちにもなるのですが、1909年のとあるインタビューでハマスホイが「私は古いもの、古い家、古い家具が好きで、それらが醸し出す特別な空気感が好きなのです」と述べているそうなので、このこととも関係があるのかもしれません。

 

さて生涯をかけて精力的に活動したハマスホイですが、1914年にガンを患い、1916年2月に亡くなります。そして死後しばらくの時を置いて、ヨーロッパ、アメリカ、日本で催された展覧会により、ふたたびその名を世界に馳せたのでした。

 前述のSMKのハマスホイの紹介動画で、彼の作品と独自のスタイルから、

“Hammershøisk/Hammershøiesque”(ハマスホイ的)と呼ばれる概念があると解説がありました。「非常に審美的で得体が知れず、独自の崇高さ・荘厳さを兼ね備えていること」を指すそうです。それほど彼のスタイルは独自の謎めいた雰囲気を持っているのだと考えさせられました。また時を超えて愛される画家であるゆえんが窺えるようにも思います。

 

これからも展覧会などでハマスホイの絵に触れられる機会が増えたらいいなと願っています。それではまた次回お会いしましょう。

(デンマーク語専攻卒業生 勝矢博子)

 

 

参考:

SMK, kunstnerprofil, Vilhelm Hammershøi, Vilhelm Hammershøi | SMK – Statens Museum for Kunst

 

SMK Digital, Vilhelm Hammershøi-portrait, https://youtu.be/tNs9adqPWYM

 

読売新聞社,美術展ナビ,ハマスホイとデンマーク絵画,

https://artexhibition.jp/denmark2020/

 

塚田史香,spice, 宮沢りえに訊く美術展『ハマスホイとデンマーク絵画』の見どころと、“ヒュゲ”な時間 ~音声ガイド・インタビュー~ | SPICE - エンタメ特化型情報メディア スパイス (eplus.jp)

2018–2021  北欧の画家ハンマースホイ(ハマスホイ)の世界,ヴィルヘルム・ハンマースホイの世界,https://www.vilhelmhammershoi.net/kittelsenepisode/