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作:Barbro Lindgren(バルブロ・リンドグレン)

絵:Eva Eriksson(エヴァ・エリクション)

Sagan om den lilla farbrorn

ちいさなおじさんのおはなし

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 あるところに、ちいさなおじさんがいました。ちいさなおじさんは一人ぼっちでした。おじさんはとても優しいのに、誰も彼のことを気にかけません。みんなおじさんのことを小さすぎて、頭が悪く見えると思っていました。また、おじさんの帽子はとても醜いとも思っていました。だからみんなおじさんのことを馬鹿にしていたのです。

 ある日、ちょうど春になったばかりのこと、おじさんは木に張り紙をしました。張り紙にはこう書いてあります。「ちいさな寂しいおじさんが友達を探しています」。そして名前と住所も。おじさんは家の前の階段に座って、誰か現れないかとじっと待ち続けました。

 待ち続けて十日目の夜、うとうとしていたおじさんの前に、一匹の大きな犬が現れます。大きな犬はおじさんを親しげに見つめて、頭をひざの上に乗せてきました。犬は次の日も、その次の日もやってきました。おじさんと犬はだんだん親しくなり、おじさんは友達ができたと喜びますが…

 ひとりぼっちのおじさんと犬の友情を描いた、心温まる物語です。春から夏、そして夏から秋、そして冬へと季節が移ろっていく中で、二人が仲良くなっていく様子がとても素敵で心に染みます。11日にも紹介したエヴァ・エリクションの絵が優しく、このお話にぴったりです。

 この絵本には、人の名前が一度もでてきません。「ちいさなおじさん」は最後まで「おじさん」としか書かれず、犬にも名前はありません。絵本において登場人物に名前がないとき、それは実際に読む子どもたちが、登場人物を自分や周囲の人間にあてはめて考えやすくする、感情移入しやすくするという効果があると思います。この絵本の主人公は「おじさん」。子どもたちと同年代ではないので、自分に当てはめて考えるのは難しそうですが、周りの大人たちについての見方はちょっと変わるかもしれません。それにしても、「おじさん」が主人公の絵本もなかなか珍しいですね。

 作者のバルブロ・リンドグレンは1965年のデビュー以来、今日まで長く活躍し続けている絵本作家です。彼女は子供向けの本だけでなく、大人向けの作品も手がけています。こうして連日絵本を見ていると、スウェーデンには絵本をコンスタントに発表する大御所の作家さんが多くいることがわかります。

(スウェーデン語専攻4年 有園)

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