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編・絵:Lena Anderson(レーナ・アンダション)

PLOMMON till alla barn

子どもたちにみんなにプラムを

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 今日紹介する絵本はスウェーデンを代表する詩人たちの詩のアンソロジーです。本のタイトルは『子どもたちにみんなにプラムを』。薄紫色の表紙の中心には大きなプラムの実が描かれています。その実の茎のところからプラムの木が生えています。木の下には女の子が座ってたわわに実ったプラムの木を下から眺めています。最初に紹介されているのはマリア・ヴィーネ(1912-2003)の”Måltid”(「ごちそう」)という詩です。「ごちそうはいかが?/まずスミレを煮つめた夜明け色のスープ/それから雪解けしたノロジカのあしあとに待雪草の花のサラダ/デザートにはハチミツのように黄金色したお月さま、メロンのように柔らかな口どけ/ワインは? もちろんどの料理にも同じワインを用意しているわ/泉からとき放たれて、喜びにあふれる水」長い冬が終わり、春がめぐりきた喜びを心いっぱい味わうことのできる自然のご馳走です。なんてすてきな詩でしょう。

 絵本では17人の詩人が紹介されています。その中には、日本でも名が知られているトペリウスやストリンドバリなど、有名な古典作家たちの詩も登場します。私の大好きなフィンランド系スウェーデン語詩人のスーデルグランの「秋」という詩も入っています。

 アンソロジーを編集し、一つ一つの詩に優しくて柔らかで、かつ想像力豊かな絵を添えているのはレーナ・アンダションという、スウェーデンの有名な絵本作家です。現在79歳。彼女は北欧の民話に登場するトムテやトロルの絵で有名なヨン・バウエル(1882〜1918)やトーヴェ・ヤンソン(1914〜2001)の影響を受けているとも言われています。彼女が詩のアンソロジーを絵本にしようと思い立ったのは、自らが幼いときに学校の授業で体験した古典の詩や賛美歌を暗誦したり歌ったりする習慣がとても楽しかったからだそうです。彼女は選んだ詩すべてを筆記体で綴っています。きっと現代の子どもたちには読みづらいかもしれません。でも大人が子どもに絵を見せながら朗読するとき、この筆記体は詩の抒情的な雰囲気、そしてリズムと見事にマッチしているように思います。ノスタルジーを大いにくすぐられる大人の絵本かもしれません。

(田辺欧)

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