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作:Maria Gripe(マリア・グリーペ)

絵:Harald Gripe(ハラルド・グリーペ)

Trolltider

トロルの時代

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 ある日、少女ウルリーカのお菓子にたいそう変なことが起こりました。いつの間にか消えてしまったのです。お母さんはいったい何が起こったのか、ちんぷんかんぷん。でも実は、ウルリーカはなぜお菓子が消えてしまったのか知っていました。人間には普通トロルは見えませんが、彼女は違ったのです。だから彼女は小トロルのクレーバがお菓子の入った袋を引きずっていくところも見ていたのですが、クレーバがあんまりに小さいのでそのまま行かせてあげたのでした。

 クレーバはその後、ウルリーカの家に住むこびと、妖精のドラベッラ、魔女のマーラの三人に、手袋の中身はなにかと尋ねられます。彼らはクレーバがお菓子をこっそり取っていったのを知っていたのです。クレーバは三人をなんとかごまかして、家で待っている妹のもとへ急ぎます。

 クレーバが持って帰ってきたお菓子を見て、妹のトーバは大喜び。二人は明日来るはずの親戚の小さな男の子、コッテのために、お菓子をとっておくことにしました。念の為、お菓子は梯子の下に、たくさん毛布でくるんで隠しておきます。でも翌朝二人が目覚めると、お菓子はなくなっていて…

 北欧の民間伝承的存在が、たくさん登場するファンタジーです。まず主人公のクレーバたちは小トロル”Småtroll”。そしてこびと”Vätte”に妖精”Fe”、魔女”Häxa”も登場します。ここでのトロルは森に住む小さな存在で、ちょっとやんちゃな感じはしますが、大きくて愚鈍な化物のイメージとは異なっています。今回は小トトロ的に小トロルと訳してみました。そしてこびと”Vätte”については、今まで何度か紹介したトムテ”Tomte”とはまた異なる存在のようですが、両者に明確な違いがあるのかどうかははっきりしません。スコーネ地方ではトムテのことを”Tomtevätte”と呼ぶそうです。ちなみにトロルとこの”Vätte”、そして”Älva”と呼ばれる精霊は、もともと同じ存在だったのではないかとも言われています。妖精の”Fe”は英語で言うところのフェアリーと同一とされていますが、スウェーデン語ではÄlvaと訳されることもあります。このあたりの関係はかなりややこしいのですが、興味のある方はぜひ調べてみてください。

 作者のマリア・グリーペはスウェーデンを代表する児童文学作家の一人。彼女は北欧神話や民間伝承にかなり通じていて、作品にはそれらの影響が色濃く見られます。夫であるハラルド・グリーペのイラストが非常に美しい絵本です。

 実はこのお話、もともとは絵本ではなく、テレビドラマ用に書き下ろされたものでした。1979年に放送された、マリア・グリーぺとその娘カミッラが共同で脚本を書いたユールカレンダー(スウェーデンのテレビ局SVTが、毎年12月1日からクリスマスイブの24日まで毎日放送するアドベントドラマ)を原作に、絵本化したのがこの作品です。1985年の初版時には”Godispåsen”「お菓子のふくろ」というタイトルでしたが、後にタイトルをドラマのものに戻して「トロルの時代」として再版されました。

​(スウェーデン語専攻4年 有園)

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