ハイネスン:William Heinesen (1900 - 1991)

オススメの作品は?

作者晩年の短編集 Laterna magica(『幻灯機』1985)です。Heinesenはフェロー諸島(ノルウェーとアイスランドの中間にあってグリーンランドとともにデンマーク王国を構成する自治領)の首都トアスハウンに生まれました。第一次世界大戦中にジャーナリストの勉強をするためにデンマークに出てきます。その後結婚して1932年には故郷のトアスハウンに戻ります。それから後はフェローでの生活を基盤にし、父親の会社の手伝いをしながら執筆活動を続け1991年、91歳という長い作家人生の中で数多くの詩、長編小説、短編を世に送り出しました。代表作はNoatun(『ノアトゥーン』1938)、De fortabte Spillemænd(『勇気なきバイオリン弾き』1950)などがあります。この『幻灯機』には10編からなる短編が収録された晩年の作品です。最初のプロローグとなっている作品Promenade i aftendæmringen(「黄昏の散歩」)は語り手が船着場に向かい物語の始まりを告げ知らせます。また表題作のLaterna magica(「幻灯機」)には近所の幻灯機に夢中になる子どもの喜びが素直に表現された幼年時代を回顧する小品で、読んでいてほっこりします。

William Heinesen の作品に触れることになったきっかけは?

ハイネスン の作品に最初に触れたのは彼の詩です。ちょうど彼がデンマークに出てきた第一次世界大戦直後の頃にデンマークでは表現主義芸術運動が興ります。画家を中心として作家、詩人、音楽家など芸術家たちがカラー版で非常に豪華な文芸誌Klingen(1917-20, 1942)を出版しました。私自身その文芸誌にとても魅せられた時期がありました。古書店で大枚をはたいてその本を手に入れたことが懐かしいです。その文芸誌の中にハイネスンの詩が紹介されていて読んだことが彼の作品に出会うきっかけとなりました。一番印象に残っているのは「三月の夜」という一編です。フェロー諸島の三月の夜がとても不思議な雰囲気と色彩で表現されています。明るさと暗さが入り混じったような表現「透きとおるような青ざめた緑色、緑がかった白い牛など」、三月の夜は春の到来を告げるようで、いまだに冬の冷たさが残る北欧の春の不確実性を見事に表現しています。